純和式の畳が浮世絵の額縁になりました
彫りを始める前には、版木上に原図の左右反転した絵を転写する必要があります。
私の自己流では、PCを使って左右反転画を作ってプリントアウトして、それをカーボン紙を通して版木上に絵を描く、という方法を取っていました。でもこの方法では、原図の絵をペンでなどるので、どうしても誤差が生じていました。
一方、彫師の伝統技法におけるその方法では、下の図のようになります。まず、版木に一面のりを付けておき、そこに原図を上下逆さまにして貼付けてしまいます。そして、皮を剥ぐようにして、紙を徐々に徐々に剥いでゆきます。紙が薄皮一枚レベルとなるとかなり原画が透けて見えてきます。最後に油、どんな油でもよいのですが、油を塗ってみると不思議なことに原画が見事にくっきりと浮かび上がってくるのです!
この技法、原画そのままの反転画なのですから、どう考えても「誤差はゼロ!」となります。現代のいかなる高度な機材を用いても、この精度には及ばないことでしょう。
この技法により、原画に極めて忠実に木版画を作ることが可能となり、また、過去の作品、例へば、北斎、広重といった江戸時代の作品に対しても、初刷り品(初回ロット品)を原図として、極めて精度の高い復古版を作ることも可能となっているのです。
ただ、この方法、原画はどこへゆくか?というと、なんとゴミになるのです!江戸生まれの伝統木版。原画をゴミにするとは、これが江戸っ子の「粋」てやつかもしれませんね。
