^Back To Top  トップに戻る
Slide
純和式の畳が浮世絵の額縁になりました
TOP.jpg
Top_Banner_Trinistyle.jpg
08.jpg
11.jpg
07.jpg
01.jpg
03.jpg
05.jpg
06.jpg
previous arrow
next arrow

  
  

第11話

常に高品質な作業を追究する彫師・摺師は、用いる材料の材質においてもとてもこだわりがあります。
彫師においは、版木は「山桜の木」を使います。非常に細かい所まで切れるよう固い反面、切れる為にしなやかさ もあり、重ね摺りに耐えうる強度もあり、水を含んでも反りにくい特性等も持っているからです。また貴重で高価 な木なので、両面彫りにしてムダなく有効に使っています。

一方、摺師においては和紙和紙(石州半紙、本美濃紙、細川紙)は、2014年ユネスコ無形文化遺産となりましたが、これら原料が楮(こうぞ)100%の手漉きの和紙は「生漉き奉書」と呼ばれ、昔から武家や幕府の公文書として使われきました。非常に丈夫であることから、何十回もの重ね摺りを行う摺師の作業には、この生漉き奉書が欠かせないものとなっています。このような高級な和紙も手作りでなければ作れないものでありますが、以下に美濃での和紙制作工程の概略を紹介致します。

  1. 原料:写真1参照
    茨城産を使用
  2. さらし:
    原料を水に浸す事によって、水に溶けやすい不純物「あく」を除き原料を柔らかくします。
  3. 煮熟(しゃじゅく):写真2参照 
    楮の繊維だけを取り出すために、晒された楮を炭酸ソーダを入れた大釜で2時間ほど煮ます。
  4. ちりとり:写真3参照 
    まだ原料に残っている黒皮などのチリ、変色した部分などを、流水の中、丹念に手作業で取り除いていきます。(チリは楮の繊維の中に入り込んでいる為、手作業でしか除けれません)
  5. 叩解(こうかい):
    ちりを取り終わった原料を、石の板の上に置き、木槌で叩いてほぐします。途中何度か返して十分ほど叩解します。
  6. 紙すき:写真4参照 
    原料の楮と『ねべし』と呼ばれるトロロアオイの根から抽出した液を、漉舟(すきぶね)に張った水の中に入れてよ く混ぜ合わせます。次に、簀桁(すけた)という道具を使って漉舟の中の液をすくい、揺ります。
  7. 圧搾(あっさく):
    すき上げた紙に圧力をかけて水分を搾ります。1日間、時間をかけながら徐々に強く絞っていきます。
  8. 乾燥:
    伝統的には、一枚ずつはがした紙を特製の刷毛を使って板に貼り付け、天日で乾かします。(現在では金属製乾燥機を使用する場合あり)
  9. 選別:
    紙を光に透かして、破損、傷、チリなどの不純物や斑のあるものは除きます。また、重さ(厚さに相当)別に細かく分別します。

ここうして出来上がった和紙は、すぐに摺り作業に使えるものではなく、「ドーサ引き」と呼ばれるコーティング作 業が必要です。これは、絵具のにじみを防止する作業で、膠(にかわ)と明礬(みょうばん)の混合液を和紙表面に塗布 しますが、その混合比、濃度などは温度、湿度などにも左右される為、ドーサ引きも専門の職人さんが行っています。

このように、和紙一つとっても、とても深い世界があります。