純和式の畳が浮世絵の額縁になりました
木版画を作ることについて、彫師、摺師のことについて説明してきましたが、それは木版画のハードウェアのお話。今後は木版画のソフトウェア、つまりデザインを描く絵師、ビジネスをする版元、について説明してゆきたいと思います。
下の浮世絵は、誰でも一度は目にしたことのある、葛飾北斎の有名な作品「神奈川沖浪裏」です。
北斎は天才だ!と言われることがよくあります。
この絵のダイナミックな構図、描写、色使い、といったことも勿論ありますが、更に驚くべきことは、この名画が墨線を除いた色数はたったの7色、つまり、たったの8回の重ね摺りでできてしまうのです。摺師からすると少ない回数で完成できるのですから、より安価に作ることもでき、より多くの人たちに提供し続けている作品でもあるのです。
彼は絵師ですから、彼が彫ったり、摺ったりした作品ではありませんが、彼はもと彫師だったということもあり、職人の能力を熟知していたと思われます。木版画には凹凸を作る関係でデザイン上いろいろな制約ができてしまうのですが、彼はその制約の中で職人の能力を十二分に引き出すようなデザインを作ることに天才的な才能があったのです。実は、彼に限らず、有名な浮世絵というのは、とてもうまく職人の能力を引き出すようなデザインをしているものなのです。
明治以降、浮世絵が海外に一気に拡散し、世界がその芸術性の高さに驚嘆しました。浮世絵そして木版画は海外で高い評価を受けていますが、次回はそんなご紹介をしようと思います。
