^Back To Top  トップに戻る
Slide
純和式の畳が浮世絵の額縁になりました
TOP.jpg
Top_Banner_Trinistyle.jpg
08.jpg
11.jpg
07.jpg
01.jpg
03.jpg
05.jpg
06.jpg
previous arrow
next arrow

  
  

札幌イルミネーション夜景(さっぽろイルミネーションやけい)

舞台は寒さ厳しい札幌の「すすきの」(右写真)。
澄んだ冷気の中、鮮やかに灯る街角のイルミネーション。
ショーウインドウから漏れる明かりやネオン看板の光が、
イルミネーションの並木に華を添えています。
そんなロマンチックな雪夜を、伝統の木版画でリアルに
表現しました。


29,800 円(税込)

 

制作風景(彫り作業)

このファンタジーな世界を版木に彫ったのは女性彫師でした。 (永井沙絵子さん、旧姓:馬場さん) 彫師の修行5年目において、師匠の関岡扇令さんの監修のもと、 修行期間終了の為の卒業課題として取り組みました。 版木は山桜の木を使います。非常に細かい彫りを行う為には、 版木は固い必要がある反面、しなやかさも必要で、その 両特性を持つ木材として、山桜の木が適しているからです。
原図となる紙を上下反転させて版木に貼り付け、薄皮1枚になる まで剥ぎ取って、それを元に掘り進めます。 先が鋭利な彫刻刀で、まず凸となる輪郭線すべてに切り目を入れます。 山桜の木は固い為、ペンを持つような握り方では深く刺さらない 為、写真のような握り方で力を加えて細部まで正確に彫り進めます。 非常に集中力と根気が必要な作業です。

凹となる部分はすべて彫り除きます。 面積の広い部分は、写真のようにノミと木槌を使って、均一な 深さで大胆に彫り除きます。 ただし、切り目を付けた輪郭部の1mm手前で彫るのは留めます。
輪郭部は非常に繊細である為に、1mm幅で残った部分を、 専用の彫刻刀を用いてすべて取り除きます。 この作業は、さらう動作から「さらい」と呼ばれています。 この作業まで完了すれば、輪郭線用の版木が完成となります。 この版木によって色板用版木の原画も作ります。また、非常に繊細 な部分まで彫られる為、版木の中でも最も重要な版木と言えます。

 

彫られた版木

広い部分の凹部の取り除きが まだ終わっていない段階。 細部はさらいまで完了済です。 白くなっているのは、原図の 紙を張り付けてある為。 色板用原図作りの為の摺りを 行った直後の状態。 ショウウインドウの輪郭線が 細かく彫られていることに ご注目。 やや斜めからの写真。細部に 渡り丁寧に彫られています。 摺りへの配慮から凸部は、 やや台形型に彫られています。 (絵具溜まり防止の為)

摺られた作品の拡大写真

上記の版木は作品における黒部に該当します。 ただ、作品においてショウウインドウの黒い輪郭線は存在していません。 それは、色板の原画作りとして使用した後、作品制作時の摺りの段階では、 その輪郭線が出ないようにその凸部をすべて削り取ったからです。 ファンタジーな絵柄としては輪郭線を無くしたいということもあり、そのような対応をしてあります。 作品には現れませんが、ショウウインドウの輪郭線をすべて繊細に彫る、という彫師さんの「影の努力」があってはじめて、輪郭線のないショウウインドウができあがったのです。

 

 

絵師:岡本辰春 (おかもと たつはる)

1964年 京都生まれ。京都市在住。
デジカメ・パソコン・プリンタを駆使しつつも、手描きの要領で丹念に制作して
和紙に表現する独自手法のデジタルアートを1997年に考案。
"浮世絵は骨董品であってはならない"という持論を掲げながら、現代の最新ツールを
用いて浮世絵の世界を描くという、世界でも類を見ない画家(絵師)である。
少年時代より浮世絵版画、特に歌川広重の名所絵には大きな影響を受け、
現代の風景を描写しながらも、暖かくてどこか懐かしいノスタルジックな作風が
持ち味であり、「平成の広重」とも呼ばれるべき世界観を持っている。
また、岡本氏は彫師・摺師による伝統的な木版画技法にもたいへん関心を持っていることより、 彼の代表的作品である「白浜 白良浜ビイチ賑景」の木版画化が実現した。

彫師:関岡扇令 (せきおか せんれい)

1957年  東京生まれ。東京都荒川区在中。本名:関岡裕介。
代々摺師の家系に生まれたが、二代目扇令の父親の勧めにより、19才より彫師の道
に入り、大倉半兵衛に弟子入りし、7年の修行を積んだ。
38年ものキャリアを持つその高い技巧は、単に原画に忠実に彫るだけではなく、
原画の甘い線を補完した彫りもできる、創造性の高い技巧を有している。
この作品においては、海の波の状況が、師の技巧により美しく表現されている。
浮世絵といった古典的なデザインだけでなく、新版画や近代版画といった新しい
デザインの彫り作業にも積極的にチャレンジしている。
また、後世の彫師育成の為、積極的に弟子を受け入れており、2013年10月、
三代目扇令として襲名された。
 

彫師:永井沙絵子(ながい さえこ)

  1983年生まれ 旧姓:馬場沙絵子
高校卒業後、京都伝統工芸大学校(現名称) にて、2年間
仏像彫刻を学び、 卒業後、2010年4月より5年間
関岡 扇令 師匠のもと彫師としての修行を行った。
修行期間には、浮世木版「札幌イルミネーション夜景」や
川瀬巴水「駒形河岸」の復刻版などの彫りを扇令師匠
監修のもと着手した。

摺師:岡田 拓也 (おかだ たくや)

1983年生まれ。 茨城県常総市在中。
高校卒業後、京都伝統工芸大学校(現名称) にて、仏像彫刻を学び、
卒業後、渡邊木版にて摺師の修行をし、2012年に独立。
約8年のキャリアを持ち、摺師として高い技巧を有してきている。
渡邊木版は川瀬巴水に代表される新版画の版元であり、新版画に
おいて用いられる多くのぼかし、かすれの技法を習得している。
伝統技法に加え、新しい技法にも積極的に取り組む新世代の
摺師である。
2017年には、NHKドラマ『眩(くらら)~北斎の娘~』にて、
北斎の神奈川沖浪裏の初摺を行う摺師役として実演の出演をした。